釣りの楽しさが詰まった
ボートシーバスフィッシング
シーバスは、川や河口、サーフ、そして海と多様なフィールドで楽しむことができ、その力強いファイトが多くのアングラーを魅了しています。近年注目を集めているのが、都市部湾岸エリアで行うボートシーバスフィッシング。地元を知り尽くしたガイドと共に出航すれば、シーバスとの出会いの確率が高まります。
軽量のバックパッキング・ギアを製作するクラフトギアメーカーJMW(Jindai Mountain Works)のジャッキー・ボーイ・スリムこと尾崎光輝さんはシーバス釣りをはじめて30年。ジャッキーさんと横浜某所で釣りをした後、ボートシーバスの魅力を伺いました。
僕の釣りはシーバスによって広がった
僕は30年くらいシーバス釣りをやっています。最初は富津岬(東京湾に突き出た半島状の砂洲)でウェーディングの釣りをしていました。今考えると、シーバスの第一時ブームあたりじゃないでしょうか。当時、シャロー(浅場)でのゲームが盛り上がっていました。1998年にima(アイマ)の『komomo』というミノーが誕生しました。このミノーはシーバス釣りの人気に大きく貢献したと思います。表層30センチくらいのレンジを攻める設計で、さらに遠投性に優れていました。『komomo』は見た目が可愛く、塗装も美しかったので、新しいタイプのルアーが登場したなあと思ったのを憶えています。
当時、サーフからミノーでシーバスを狙うというカルチャーにいた人の多くは、ブラックバス釣りをしていた人だと思います。もし、ブラックバス釣りをしていなかったら、9フィートのスピニングロッドで軽いミノーをキャストするのは難しかったでしょうね。ブラックバスは頑張っても50センチくらいのサイズですが、シーバスは60~80センチクラスが上がり、メーター越えもあり得ます。さらに、サーフでは青物が釣れることもあります。サーフでシーバスを狙っていた人が青物の楽しさを知るわけです。竿がとんでもなく曲がるので、一度あの引きを体験するとハマっちゃいますよね(笑)。僕もシャローのシーバス釣りがきっかけで、青物をはじめ、いろんな釣りを始めました。今ではそれも落ち着きました。春から夏の終わりまでは渓流でヤマメやイワナをフライで狙い、それ以外の季節はシーバスを釣ることが多いですね。
今の時代だからこそおすすめしたいシーバス釣り
シーバス釣りの経験があれば、いろんな釣りに対応できるので、僕はシーバス釣りをおすすめします。なかでも特におすすめするのは、「ボートシーバス釣り」です。小型の船でシーバスのいる場所まで連れて行ってもらう釣りです。乗り合い船もありますが、知らない人たちと釣りをするのも気を使いますので、気心の知れた仲間同士でチャーターするといいでしょう。仲間となら好きなエリアに行くことができるし、料金を分担すればコストも抑えられます。何よりガイドさんは地域の最新情報を持っているため、魚が釣れる場所をよく知っています。
なぜ、ボートシーバスがいいかというと、岸と比べて圧倒的に釣れます。そして、立ち入り禁止地域を気にしなくていいという点も大きい。最近、釣り禁止になった場所が増えていませんか? 禁止ではなくても、「ここで釣りをしても大丈夫だろうか?」と不安を感じながら釣りをした経験はないでしょうか。ビクビクしながらの釣りは楽しめませんよね。地域のルールをよく知っているガイドと一緒に、ボートでシーバスを狙うことで、安心して釣りを楽しむことができます。
ボートシーバスの魅力
ボートシーバスは純粋にシーバスとのゲームを堪能できます。船でポイントに着き、周囲を観察すると、潮の流れや水の色の違い、魚が潜むストラクチャー(岩礁やテトラなど)の位置が見えてきます。水温によってルアーを通すレンジを変えたり、ルアーの選択したりと、釣りを考えるヒントにもなります。
「あの辺りにルアーをキャストして、流れに乗せながら明暗部に流し込んでみようか……」といった戦略を立てるのも楽しいものです。そして、戦略が的中して釣れたときの喜びは大きい。繰り返しになりますが、純粋にシーバスと向き合うにはボートシーバスが一番だと思います。
また、シーバスが目的でも小型のルアーなどを用意しておくとみやげ用のアジやメバルを狙うこともできます。ボートを予約する際、シーバス以外の釣りが可能かなどを聞くものいいでしょうね。
シーバス釣りが人気の理由
シーバスは再現性が高い釣りです。一度ルアーや釣り方のパターンを見つけると連発する傾向が高いのです。ベイト(エサ)のカタクチイワシやイナッコ(ボラの幼魚)のサイズからルアーのサイズや時間帯でルアーの色やアクションを変えたりします。自然を観察して得た情報で1匹を釣り、そこからその日のパターンが見えてくる(この再現性という意味ではフライフィッシングにとてもよく似ています)。この捕食行動のパターンを見つける事が出来ればバイトが連発し、ツヌケ(10匹以上の魚を釣ること)も可能です。しかし、このパターンも時間や潮によって刻々と変化します。仲間たちと違う釣りをしながら答えを見つけていくと楽しいと思います。この再現性を見つけていくのがゲームフィッシングの醍醐味です。だから、シーバス釣りはこれほど人気があるのでしょうね。
これには絶対気をつけて! ボートシーバスの注意点
ボートでシーバスを狙う際の注意点があります。狭い船内で釣りをするため、針が服にかかったり、時に人に刺さったりと、危険なことが起こり得ます。僕が怖いなと思うのが「カラ合わせ」です。魚が掛かったと思って強く合わせた時、魚の口が切れてしまい、ルアーだけが飛んでくることがあるんです。そのため、必ずルアーのフックはバーブレスフック(返しのない針)にしましょう。針ごとバーブレスフックに交換するか、プライヤーで返しをつぶしてください。
「返しがないと魚がバレるのでは?」と心配する人もいますが、経験上、糸のテンションが保たれていればバレることはありません(当然、テンションがなければ外れます)。僕はシーバスでの釣りは基本的にすべてバーブレスにしています。バーブレスの利点もあります。掛かりが良いですし、釣った後のリリースが楽です。キャッチ&リリースの釣りをする場合、バーブレスにするのが良いでしょう。
シーバス釣りは本当に楽しい釣りです。船、サーフ、川など、様々な場所で狙える魚です。特に東京湾は、世界でもシーバスが最も多く生息していると言われています。大都市からすぐの場所で大きなシーバスが釣れるなんて、驚きですよね。海外からの観光客も大都市湾岸部でのシーバスフィッシングの魅力を知り始めているようです。ルアーフィッシングが好きな人は、シーバスフィッシングをやらない手はないと思います。まだはじめていない人は、ぜひボートシーバスフィッシングにチャレンジしてみてください。きっと、楽しい経験になると思います。
尾崎光輝(ジャッキー・ボーイ・スリム)
アウトドアギアクラフトマン。春から夏の終わりは渓流でフライロッドを振り、他のシーズンはシーバスや様々な釣りを楽しむ。2018年にJMW(Jindai Mountain Works)を立ち上げ、現在は東京・高尾の山麓にアトリエを構えている。