フィールドに蓄積する負の遺産
釣りで滅入ること。それは根掛かりだ。上達すれば根掛かりを外せる確率は上がるが、それでもラインやフックに負荷をかけてしまう(時にロッドも!)。多くの場合、糸が切れ、釣り人の深いため息がフィールドに響く。愛するフィールドに異物を残した罪悪感が心を支配し、またため息が出る。しかし、ため息をつきたいのはフィールドの方だろう。
釣り人なら誰でも知っている、あの後味の悪さ。だけど、私たちはリーダーを結び直し、新しいルアーをセットする。そしてすぐに目の前の魚に夢中になり、失ったルアーのことは記憶の彼方へと追いやられていく。そうやって私たちは、異物をすぐに忘れてしまいます。
けれど、湖は忘れない。
切れたライン、取り残されたルアーは、私たちが去った後も、10年、50年、あるいは100年と、その場所に留まり続けます。私たちが愛したその美しい水底で。「負の遺産」として残り続けます。
湖の底から釣り具を回収する
中禅寺湖では、そこで話を終わらせない挑戦が始まっている。「負の遺産」を回収し、次の価値に変え、さらに次の清掃資金へつなぐ。そんな循環をつくろうとしている。
プロジェクトを進めるLakeside Storiesは、奥日光・中禅寺湖を「2100年も鱒が棲み続けられる湖」にしていくことを掲げるNPO。中禅寺湖はフライフィッシング文化の長い歴史を持ち、毎年2万人超の釣り人が訪れる人気のエリアだ。同団体の2024年調査では、釣り人1人あたり1日約2.6個のルアー/フライをロストし、年間では延べ約41,000個。切れたラインは延べ113kmに及ぶ推計だという。ぞっとする数字だ。
では、どれだけ回収できているのだろうか。2025年の湖底清掃(6日間)では、釣りごみ約144kg(ルアー3,904個)と一般ごみ約33kgを回収。これは、年間ロスト分の約15%相当にとどまる。
しかも作業は簡単じゃない。標高1,269mでの高所潜水、刃物を使ったライン切り離し、ダイバー人材の不足。さらに、関係者がほぼボランティアでも2025年は約105万円の経費がかかった。そこでこのプロジェクトは、清掃を「単発の善意」で終わらせず、仕組みに変えることにした。湖底から回収した金属ルアー(真鍮・銅・鉛など)を新合金「日光はがね」に再生し、熊鈴などのプロダクトとして展開。販売利益を次の湖底清掃に回す設計だ。
そしてこのプロジェクトでは、以前、fishupでも紹介したMarine Sweeperが連携先となり、湖底に沈む釣りごみや一般ごみをダイバーが手作業で回収している。
私たちは何を選択するのか
現在、クラウドファンディングは、第一目標300万円を達成後、現在はNEXT GOAL 1,500万円に挑戦中だ。集まった資金は、清掃体制強化・アップサイクル製品開発・販売体制整備に充てるそうだ。
一度でも、フィールドに負の遺産を置いてきたことのある人は、まずはプロジェクトページを開いて、「何が起きているのか」を知ってほしい。私たちはフィールドに何を残していくのか。それを選択できる機会が中禅寺湖で始まっている。
Lakeside Stories 1873 プロジェクトページ
https://readyfor.jp/projects/lakesidestories1873